優れたデザインや高いステイタス性など、機械式のブランド時計には様々な魅力がありますが、精度の高さもその一つです。
しかし、使っているうちに進む・遅れる、場合によっては止まるという不具合が出てくるものです。
また正確さでは機械式を上回るクオーツ時計でも同じような不具合が出る場合があります。
そんな場合は「磁気帯び」を疑ってみましょう。
進む・遅れる・止まる、磁気帯びの原因はこれだ!
正確な時間を刻み続けることはブランド時計の条件の一つとなっており、多くが国際的な精度規格「クロノメーター」をクリアしています。
クロノメーターを名乗ることができるのは、一日あたりの誤差が+6秒から-4秒以内の時計のみ。この精度なら人間はまず体感できません。
しかし、「いつの間にか数分遅れている」というような体感できる誤差があらわれてしまうのです。
機械式時計だけでなく、クオーツ時計でもおこる誤差の原因は磁気帯びかもしれません。
磁気帯びとは?
時計の金属パーツが磁気を帯びてしまい、引き合ったり反発することで、高い精度が得られなくなるトラブルのことです。
磁気帯びの原因
磁気帯びの主な原因は「磁気を発生するものそばに時計がある」ことです。
こんなものに注意
パソコン、スマートフォン、テレビ、ヘッドフォン、スピーカー、磁石式のバッグの留め具、冷蔵庫、電子レンジ、電気カミソリ、ネックレスなどアクセサリーや、磁気を発する健康器具(まくらなど)
磁気帯びの確認の仕方
腕時計が磁気帯びしているかどうかの確認に、時計修理専門店は「ガウスメーター」という専用の機械を使うのですが、同じことはご家庭ではできません。
方位磁石に近づけて針の動きで判断するという方法もあるようですが、今は方位磁石をもっていない人の方が多いのではないでしょうか。
ここには置かない!磁気帯びの防止の仕方
メモ
磁気帯びが起きやすい場所や、磁気の蓄積について説明します。あらかじめ磁気帯び対策がなされている時計についてもお話ししましょう。
蓄積していく磁気帯び
磁気帯びで何よりも注意したいのは、スピーカーやモーターなど強力な磁石が使われている家電の付近です。
少しの時間でも、時計が帯磁してしまう場合があります。
一方、パソコンやスマホなど微弱な磁気を発生している機器なら、腕時計を身に着けたまま操作しても磁気帯びは大丈夫でしょう。
ただし磁気は蓄積していきますから、半年、数年たつと腕時計の誤差となって表れます。
磁気帯び対策済みの時計
近年の腕時計ではパーツを非金属に置き換えるなど、あらかじめ磁気帯びしにくい工夫がなされているのですが、以下のモデルはさらに強力な帯磁対策がほどこされたものです。メーカーが対策を講じるほど、磁気帯びは厄介なものなのですね。
ロレックス「ミルガウス」
過酷な環境におけるプロのための時計を手掛けてきたロレックスが、強力な磁場にさらされる研究者のために開発したモデルです。特殊な合金でムーブメントが覆われており、稲妻型の秒針がアイコンとなっています。
IWC「インヂュニア」シリーズ
1955年より続くシリーズには、ドイツ語でエンジニアを表す名前が付けられています。耐衝撃性、防水性とともに与えられたのが耐磁性。タフさだけでなく、エレガントさを感じさせる外観で人気のシリーズです。
ボールウォッチ「エンジニア」シリーズ
コストパフォーマンスの高い機械式時計を作り続けるブランド、ボールウォッチの耐磁性を高めたシリーズです。近年ではカーボンを使用するなど、耐磁性だけでなく頑丈さを全面に押し出しています。
家庭でもできる?磁気帯びの直し方
磁器抜き用機器や磁器抜機を購入する
安価なものなら1,000円程度、国内メーカーのものなら1万円程度で販売されています。
ただ、磁気は目に見えるものではありません。
磁気抜きが完了しても、誤差が解消されたのかどうかはっきりとしません。
時計修理専門店の磁気抜きはこれだ!
時計修理専門店の磁気抜きは、以下の手順でおこなわれます。
磁気抜き手順
- 「ガウスメータ」で磁気帯びを確認
- 「タイムグラファ」「クオーツテスタ」で誤差を確認
- 「磁気抜き機」を使用、場合によっては「パーツごとに磁気抜き」
- 「ガウスメータ」で磁気帯びの解消のチェック
- 「タイムグラファ」「クオーツテスタ」で誤差の解消をチェック
実際の磁気抜きだけでなく、磁気帯び・磁気抜きの確認、精度チェックそれぞれ工程で専用の機械を用いることで、確実に問題を解消します。
その不調、原因は磁気帯びだけですか?
ココに注意
このようにやっかいな磁気帯びですが、さらにやっかいなことは時計の不調の原因が磁気帯びとは限らないことです。
パーツの劣化や破損、ゴミの紛れ込み、油切れでも時計の精度は損なわれてしまいます。
腕時計の精度不足に気付いたならば磁気帯びを疑うのと同時に、オーバーホールの依頼を検討してください。
オーバーホールならば、磁気帯びだけでなく精度不足の原因全てをチェック・解消してくれます。
ポイント
オーバーホールの周期は3〜5年に1度。
車における車検と同じで、安心して時計を使い続けるのに必要な整備です。
機械式時計だけでなく、電池で動作するクオーツ時計やメンテナンスが不要と誤解されがちなソーラー時計にもオーバーホールは必要です。
大切な時計の不調を防ぐためにも時計修理専門店に、ぜひご相談ください。
磁気帯びなどの不調を起こさないために
近年のブランド時計には対策が施されているとはいえ、磁気は時計の大敵です。
強い磁石のそばに置くことを避けるのは当然ですが、磁気を発する機械があふれた現代ですから、注意していても磁気帯びは起こってしまうと考えるのが自然でしょう。