宇宙の歴史を刻んだ「オメガ スピードマスター」。その堅牢性と精密なクロノグラフ機能は、多くの時計愛好家を魅了し続けています。
しかし、どんなに優れた時計でも、長年愛用するためには適切なメンテナンス、特にオーバーホールが欠かせません。
「スピードマスターの修理費用はいくら?」
「どんな故障が多いの?」
「いつメンテナンスに出せばいい?」
この記事では、そんなあなたの疑問を解消するため、オメガ スピードマスターのオーバーホール費用、主な故障事例、そして最適なメンテナンス時期について詳しく解説します。

1. オメガ スピードマスターのオーバーホール費用相場
オメガ スピードマスターのオーバーホール費用は、依頼先が「オメガ正規サービス」か「一般の高級時計修理専門店」かによって大きく異なります。
1-1. オメガ正規サービス(オメガブティック・カスタマーサービス)の費用
オメガ正規サービスでは、メーカー基準に則った修理が行われ、純正部品が使用されるため、最も安心感が高い選択肢です。

コンプリートメンテナンスサービス(オーバーホール)基本料金
- 手巻きプロフェッショナル、自動巻きクロノグラフモデルなど(非コーアクシャル): 135,300円〜
- コーアクシャル機構搭載モデル(クロノグラフ): 157,300円〜
(2023年1月10日受付分から大幅な値上げが実施され、上記料金になりました。)
1-2. 一般の高級時計修理専門店の費用
一般の高級時計修理専門店は、正規サービスよりも費用を抑えられる傾向があります。技術力やサービス内容は店舗によって異なるため、信頼できるお店選びが重要です。
- 基本技術料: 35,000円〜60,000円程度
手巻きプロフェッショナルモデルで38,500円〜、
自動巻きクロノグラフで33,000円〜、54,780円〜 といった料金設定が見られます。
新品仕上げ(外装研磨)を含めても、50,000円台〜が目安となることが多いです。
- 追加料金: 部品交換が必要な場合は、別途費用が発生します。
専門店によっては純正部品を使用する場合と、互換性のある高品質な部品を使用する場合があります。事前に確認しておきましょう。
費用相場比較表
2. オーバーホールにかかる期間の目安
2-1. オメガ正規サービスの場合
期間: 約1ヶ月半〜2ヶ月以上
メーカーでは通常6〜8週間ほどかかるとされています。
複雑な修理や、スイス本国からの部品取り寄せが必要な場合は、数ヶ月から半年以上かかることもあります。
2-2. 一般の高級時計修理専門店の場合
期間: 2週間〜1ヶ月前後
正規サービスと比較して、修理期間が短い傾向にあります。
スピードマスターのようなクロノグラフモデルは、通常の3針モデルより少し長く、3週間〜1ヶ月程度かかることが多いです。
3. オメガ スピードマスターの主な故障事例と症状

止まり・動作不良:
「しばらく使っていたら急に止まった」「振っても動かない」といった症状。油切れやゼンマイの劣化、部品の摩耗が原因であることが多いです。
時間精度不良(遅れ・進み):
「以前より時間が大幅に遅れるようになった」「急に進むようになった」などの症状。ムーブメントの油切れ、部品の摩耗、磁気帯びなどが原因として考えられます。
クロノグラフの不具合:
「ストップウォッチの針がリセットしても12時位置からずれる」「プッシャーが固くて押せない」「クロノグラフが動作しない」といった症状。クロノグラフ機構の複雑さゆえに、油切れや部品の摩耗・破損が発生しやすい箇所です。
特に「リセットすると12時間計がずれる」という現象は、特定のムーブメントで比較的多く見られる事例です。
外装の損傷:
「風防(ガラス)が割れたりヒビが入った」「リューズやプッシャーが抜けた/固着した」「ケースやブレスレットの傷」など。
パッキンの劣化による防水性の低下も、内部に湿気や水が入り込む原因となります。
水入り・湿気混入:
内部に水滴が見える、文字盤が曇るなどの症状。防水パッキンの劣化や、リューズ・プッシャーからの浸水が原因です。放置するとサビや腐食が進み、ムーブメントに致命的な損傷を与えます。
4. メンテナンス時期と頻度

推奨されるオーバーホール頻度
オメガは、5〜8年ごとのコンプリートメンテナンスサービスを推奨しています。
特にコーアクシャル機構を搭載していない従来のスピードマスター(非コーアクシャル)は、5〜8年が目安とされています。
コーアクシャル機構搭載モデルは、部品の摩耗を抑える設計のため、8〜10年と少し長めの頻度で良いとされることもあります。
ただし、時計の状態や使用状況(日常使いか、コレクション用かなど)によって適切な頻度は異なります。
古いモデルやメーカーでのオーバーホール後の保証期間が短い(2年間など)時計は、3〜5年ごとのオーバーホールが推奨されることもあります。
日常のメンテナンスと注意点
- 毎日着用している場合は、時計を外したら柔らかい布で軽く拭く
- 磁気帯びを避けるため、スピーカーやPC、スマートフォンなどの磁気を発する機器から遠ざける
- 防水時計であっても、リューズやプッシャーがしっかり閉まっているか確認し、水中での操作は避ける
- 強い衝撃を与えない
オーバーホールを検討すべきサイン
- 購入してからまたは前回のオーバーホールから5年以上経過している
- 時計の時間が大幅に遅れる、または進むようになった
- クロノグラフの針がズレる、リセットできない、作動しないなどの不具合がある
- リューズやプッシャーの操作が固い、または緩い
- ケースの内側に結露が見られる、湿気ている感じがする
- 異音がする
5. 修理店選びのポイント

オメガ正規サービス
- メリット: 純正部品の使用、メーカー基準の品質、長期保証(2年)、時計の修理履歴がオメガに記録されるため、将来的な売却時に有利な場合がある。
- デメリット: 費用が高額、修理期間が長い傾向がある。ヴィンテージモデルは純正部品の供給がない場合や、オリジナル性を損なう修理になる可能性もある。
一般の高級時計修理専門店
- メリット: 正規より費用を抑えられる、修理期間が短い傾向がある、ヴィンテージモデルのオリジナル性を尊重した修理に対応可能な店も多い、柔軟な対応が期待できる。
- デメリット: 店舗によって技術力や使用する部品が異なるため、選定が重要。
6. よくある質問(FAQ)
Q: オーバーホールしないとどうなりますか?
A: ムーブメント内部の油が切れ、部品の摩耗が進行します。これにより精度が低下し、最終的には時計が完全に停止する可能性があります。最悪の場合、致命的な損傷で修理費用が高額になったり、修理不能になったりすることも。
Q: オーバーホール時に部品交換は必須ですか?
A: 必須ではありませんが、摩耗や劣化が進んでいる部品は交換が推奨されます。特に正規サービスでは、メーカー基準を満たさない部品は基本的に交換されます。費用を抑えたい場合は、専門店で相談してみましょう。
Q: ヴィンテージスピードマスターの修理はどこに頼むべきですか?
A: ヴィンテージモデルの場合、正規サービスではオリジナル性を損なう修理になる可能性や、部品供給がないために受付不可となる場合があります。オリジナル性を重視するなら、ヴィンテージ時計の修理実績が豊富で、相談に親身に乗ってくれる専門性の高い修理専門店を探すのがおすすめです。
大切なスピードマスターを長く愛用するために
「オメガ スピードマスター」は、あなたにとって特別な存在であるはずです。その最高の性能と魅力を長く維持し、次世代へ受け継いでいくためには、定期的なオーバーホールが不可欠です。
費用や期間、正規サービスと専門店の特性を理解し、ご自身のスピードマスターの状態とニーズに合った最適な修理方法を選びましょう。そして、信頼できる修理店を見つけることが、あなたの愛機を最高の状態に保つための第一歩です。